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わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(5・完)〜

不定期に連載してきた「わかりやすいライティングのコツ」も今回が最終回。最後にご紹介するのは、文章そのものの書き方ではなく、文章全体の見せ方にも気を配ろうというお話です。

数百字や数千字といった、まとまった量の文章を書こうと思った場合、その文章がどんなによくても、読みにくいときがあります。内容は悪くないし、文章も推敲したはずなのに……これはいったい何が原因なのでしょう。
ひとつ考えられるのは、文章の見せ方に工夫がされていないことです。

その文章に題名や見出しはついていますか?
改行されていますか?
文字の大きさや行間は気にしていますか?

文章は人にものを伝えるための手段です。どんなに中身がよくても、わかりやすい文章であっても、文章全体が相手に読みやすい形になっていないとその効果は半減してしまいます。


①タイトル(題)をつける


短い文章でもタイトルは必ずつけましょう。タイトルは文章の内容を端的に表すものですから、タイトルがついているだけで読み手が内容をイメージしやすく、理解しやすくなります。

下書き段階であれば仮題でもかまいません。つけておくだけで書き手自身も主題から逸脱しないよう意識することができますし、むしろ素直なタイトルがおすすめです。完成したら、あらためて正式なタイトルを検討してください。

タイトルをつけるコツはあまり長すぎないこと。また、自分が一番伝えたい主題にそった言葉を選ぶことが大切です。
ちなみにWEBの文章では、SEO(Search Engine Optimization)効果の高いタイトルをつけるよう推奨されますが、通常の文章でタイトルを書く場合とは別の考え方が必要ですので、それはまた別の機会に譲りましょう。

②見出しをつける


短い文章では必要ありませんが、まとまった文章量があるなら、見出しをつけることも考えておきましょう。
タイトルと同じように、見出しも文章内容を表すものです。いくつか見出しがあることで全体が俯瞰しやすくなり、たいへん理解しやすくなります。

当連載の第1回でも紹介しましたが、構成を決める際に、一緒に見出しもつけておくのが理想です。
分量にもよりますが、最終的には見出しを文章の頭にまとめ、目次にするとより親切です。

③段落と改行の使い方


文章をすっきり見せるには、段落と改行を効果的に使いましょう。普段、何気なく使っているとは思いますが、これもルールにそってやることで、さらに読みやすい文章になります。

段落とは文章の集まりです。基本的には同じ内容に関する文章で構成され、段落が終了すると、つまり内容が変わると、改行して次の段落に移るわけです。ですから段落と改行は、ほぼ同じ意味と思って問題ありません。

ただし、段落には改行のほかにもうひとつ手段があります。こちらは改行に加え、段落と段落の間を1行空ける方法です。見た目でより強い区切りとなるので、完全に話題が変わったことを伝えることができます。

改行があまりない文章が読みにくいのはもちろんですが、改行が多い文章も意外にわかりにくいものです。
とはいえ見た目の文字量などで判断をしてはいけません。その段落の内容をしっかり踏まえて書くようにしましょう。基本的には同じ内容に関する文章が終わるところで改行するのがおすすめです。

■WEBの場合は独自ルールでも可

「改行するときは1文字分空ける」と学校で習ったと思いますが、WEB上では横書きだから英字にならうという理由で、1文字空けずに表記する場合も増えています。
また、1行分空ける段落変えは紙媒体でもありますが、WEB上ではひんぱんに見られる表現です。

基本的にはパソコンなどでの視認性を重視した表現といわれていますが、実際はそこまで視認性アップにつながるほどでもないため(むしろ段落分けが多くなりすぎて読みにくくなる場合が多いです)、ケースバイケースで用いるとよいでしょう。

④ひらがなと漢字のバランス


「文章の書き方 〜わかりやすい文章を書くコツ(4)〜」の「⑨ 漢字は使いすぎない」で、漢字はなるべく開くというお話をしました。
しかし、逆にひらがなばかりの文章も読みにくくなります。それは漢字が意味をもつ文字だからです。たとえば下の例文を見てください。

「とうきょうとっきょきょかきょくにつとめるきゃくはよくかきくうきゃくだ」

まるで復活の呪文なみの難解さですが、これが漢字だと……

「東京特許許可局に勤める客はよく柿食う客だ」

ひとめで意味がわかるようになります。読みやすい文章は昔から「漢字3割:ひらがな7割」といわれるように、バランスに注意することが大切です。

⑤文字の見せ方


文章内容ではなく、その見せ方に気を配るという話を続けてきましたが、最後に文字のデザインそのものを変えて見やすくしようという説明をしておきます。

手書きの時代には、そこまで考えて書くことはまず無理でしたが、パソコンなどで文字を書くことが主流になった現在、文字自体の見せ方も自分で変更できるようになりました。これを活用しない手はありません。

■文字のデザイン

一番手っ取り早いのが、文字の大きさを変えたり、色をつけたり、さらには書体を変えたり、アンダーバーをつけたりすることです。やりすぎると逆にどれが大事なのかわかりにくくなるだけですので、目立たせたいところで効果的に使いましょう。

■行間

先に説明した1行空けではなく、文章全体の行間を狭くしたり広げたりします。ただ、基本的には文字の大きさによって、読みやすい行間はだいたい決まっており、パソコンなどではデフォルトで設定がされています。
それをあえて変更するのは、デザイン的な知識やセンスも要求されます。よほど読みにくかったり、デザイン的な狙いがないかぎり、デフォルトの設定で十分でしょう。

■文字詰め

文字詰めは文字と文字の間の間隔の調整で、これもパソコンなどではデフォルト設定で十分です。しかし書体や文字の大きさを変えると、設定によってはそれに応じた文字詰めに変わることもあり、場合によっては1行に入る文字数が変わることがあります。厳密な行数などが求められる場合には注意してください。

最後に


5回にわたってお送りした「わかりやすいライティングのコツ」、いかがだったでしょうか。
連載の最初にも書いたとおり、文章はちょっとしたコツを覚えるだけで、見違えるように上達します。

ただ、技術を覚えても、すぐに実践できるほど簡単ではないことも確かです。文章力を高めるには、やはりたくさんの文章を書くことが大事ですし、上手な文章をたくさん読むこともおすすめです。

今後、みなさんが文章を書くときに、この連載が皆様のお役に立てれば幸いです。

わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(1)〜

わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(2)〜

わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(3)〜

わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(4)〜

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