わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(2)〜
前回の記事(「わかりやすいライティングのコツ〜不定期連載(1)」)では、「よい文章とはどういう文章か」、「文章を書く前に注意しておきたいこと」など、文章を書く前の心得的な内容でしたが、今回からは実践編として文章を書くときの具体的なルールやコツをご紹介します。
① 文体は統一する
文体といえば「ですます調」と「だ・である調」の2つがあることはご存知だと思います。文章を書く場合には、この文体をどちらかに統一することが基本ルールです。
文体が混在した文章を読むと、リズムが悪く、読みにくさを感じますが、これはそれぞれの文体の特性が大きく異なるからです。
「敬体」と「常体」
「ですます調」は正式には「敬体」といい、丁寧語で柔らかく親しみやすい印象を与えます。不特定多数の人に読んでもらいたい説明文やコラム、あるいはコミュニケーションが重要なメールなどに多く使われます。
一方の「だ・である調」は正式名称を「常体」といい、断定的で強い意志が感じられます。メッセージを訴えたいとき、より説得力を持たせたいときに使うと効果的で、論文や新聞記事、報告書などに向いています。
このように、使う目的や与える印象が違うため、ふたつの文体を混ぜてしまうと、違和感のある文章になってしまうのです。
ただ、文体を混ぜるのが絶対ダメというわけではありません。レトリックとして、あえて混ぜる場合もありますが、主に小説やエッセイなどに用いる技法ですので、ここでは省きます。
② 一文一意を意識する
「一文一意」とは読んで字のごとく、ひとつの文章にひとつの意味だけを入れるということ。文章の主旨を支えているのは主語と述語です。すなわち「誰がor何が」と「〜するor〜した」でペアとなり、意味が通じるわけです。
文章における骨格といっていいと思いますが、この骨格に、肉にあたる修飾語などがついたり、あるいは骨格同士がつながったりして、文章が長くなるわけです。
「〜が、」や「〜ので、」で文章をつなげすぎたのが修正前の文章です。また、「ゲーム機」の前に「新しく発売されたばかりの」という修飾語が入っているのも、文章を長くした原因です。それぞれを分けることですっきりさせたのが修正後の文章です。
長い文章が必ずしも悪いとはかぎりませんが、文章が長く複雑になるにつれ、どうしても要点が曖昧になりがちです。少なくともビジネスの場においては、短い文章を心掛けるようにしましょう。慣れないうちはひとまず文章を書きあげ、そのあとで推敲して短くまとめるのがコツです。
③ 意味が重複する文章を繰り返さない
不要な文章を盛り込みすぎると、回りくどいだけでなく、要点がわかりにくくなります。
強調したい気持ちが強いと、ついつい同じことを繰り返しがちですが、読み手には逆効果となってしまうのです。
④ 主語と述語のねじれに注意!
主語と述語が文章のなかで離れすぎると、ペアの判別がつきにくくなり、わかりにくい文章になってしまいます。
また、わかりにくくなるだけでなく、「文章のねじれ」が起きやすくなります。「文章のねじれ」とは、文章の主語と述語の関係がおかしくなり、意味が成立しなくなることです。これも例文で見てみましょう。
これはわかりやすい例ですが、ねじれは文章の主語と述語だけを抜き出すとより明確になります。修正前では「日課は遊びます」となり、主語と述語の関係が破綻していますので、「日課は遊ぶことです」と修正すればOKです。長文や抽象的な文章を書いて、何となくしっくりこないときは、このねじれを確かめて、そのうえで文章を分けるなりするとよいでしょう。
⑤ 修飾語は被修飾語のすぐ前に置く
修飾語と被修飾語も、主語と述語の関係と同じように、両者を近づけることが基本。修飾語は被修飾語のすぐ前におかないと、間違った解釈をされる可能性もあります。まずは下の例文をご覧ください。
気にせずに読んでしまいがちですが、この文章では、「めったにないことだが」という部分が「プリントアウトに手間取って」にかかっているのか、「会議の開始に遅れたらしい」にかかっているのか判別できません。
これは前者であれば読点や句点で文章を区切って文章を補足する、また、後者であれば「会議の開始に遅れたらしい」のまえに「めったにないことだが」を移動すれば、意味が通じます。
または
⑥ 長い修飾語は前に、短い修飾語は後ろに
修飾語と被修飾語の関係に注意する点をもうひとつげておきましょう。句や文節を使った長い修飾語は前に、語だけの短い修飾語を後ろに置くと、意味が通じやすくなります。
たとえば上の文章では、修飾語として「金色の」と「宝箱の中に入っている」の二つが含まれています。注意したいのが「金色の」で、一見「宝箱」にかかっているように思えますが、「王冠」にかかっている可能性も否定できません。
このような場合には、先の説明どおり、長い修飾語「宝箱の中に入っている」を前に置くと混乱がありません。
王冠ではなく、宝箱が金色だった場合は、下記のように文章を二つに分けるなど工夫してみましょう。
最後に
「わかりやすいライティングのコツ」の2回目、いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した内容は、文体や文章全体のポイント、そして主語と述語、修飾語と被修飾語など、文章の骨格となる部分をまとめてみました。3回目の連載にもご期待ください。
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