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朗読劇の作り方ーー。ゲーム原作を用いた制作事例

皆さん、朗読劇を観たことはありますか?
いわゆる「演劇」は、舞台上にセットを施し、役者が台詞と体全体で演技し、物語を展開してみせるお芝居です。

一方、「朗読劇」はもっとシンプルに、役者はマイクの前に立って(あるいはイスに座って)、台本を読む形で演技をするというもの。セットや役者の動きが最低限に抑えられているため、セリフや音の表現がより重要になり、観客の想像力を刺激してくれるという点が、その魅力なのです。

HIKEもこれまで、オンラインも含めた朗読劇イベントに携わってきており、舞台制作・演出・キャスティングのほか、WEBサイト、キービジュアル、ロゴ制作など、版権元の企業様主導のもと広い範囲で制作をお手伝いしてきました。

今回はゲーム原作のイベントを事例に朗読劇の作り方をご紹介していきましょう。

ストーリー案選定〜プロット作成

あるゲーム作品を原作とした朗読劇のコンセプトは、ゲーム本編で描かれていない部分を膨らませたシナリオとなっていました。

このような場合は、まずはゲーム本編で「語られなかったエピソード」のうち、どの部分を朗読劇にするか、主催者やシナリオ作家と共に選定します。

エピソードが決まったら、作家にプロットの作成を始めてもらいます。物語におけるプロットとは全体の大まかな構成、つまりお話の良し悪しのわかる設計図ですので、この作業はとても重要です。

演出サイドは、原作の設定や今回扱うエピソードの前後関係などに間違いがないように、シナリオ作家にゲーム本編のシナリオや設定資料、ゲームプレイ映像などを渡し、プロットの完成を待ちます。それと同時に、朗読劇に登場するキャラクターの声優陣に対して出演依頼をかけ、スケジュール調整を行います。

プロット確認〜シナリオ初稿作成、舞台背景の設定

プロットが完成したら、まずは社内でチェックをします。
設定が破綻していないか、登場キャラクターのバランスはよいか、予定公演時間に収まりそうか、何よりファンの方々に満足してもらえる内容になっているか…………等々のチェックをして、作家に修正を相談しつつ、その後版権元企業様へプロットを提出し、監修をしてもらいます。

プロットの監修が通ったら、作家に初稿の執筆を依頼します。プロットに修正箇所などがあればそこも合わせて連絡し、初稿の制作に移ります。

その間、演出サイドは朗読劇のシーンに合わせた舞台背景の選定を開始します。作業としては、シーンに合ったゲーム内画像を選定し、背景用に加工していきます。朗読劇を行う場所(劇場・スタジオなど)によっては、設備の仕様に合わないケースもあるので、必要に応じて解像度を調整したり、ストーリー上で不要なオブジェクトがあれば画像から消去したりなどして対応。エピソードの世界観と合わせた素材を新規に作成することもあります。

シナリオの初稿が上がってきたら、版権元企業様と演出サイドで改めて内容をチェックします。設定や前後関係はもちろん、キャラクターごとの見せ場が作られているか、物語の尺がどれくらいになるか……加えてここでも、さらにおもしろくなるような調整を施していくのです。

シナリオ修正〜演出作業

初稿確認後はその修正を進めつつ、舞台全体の演出を詰めていく段階となります。先行して制作している背景のほかに、さまざまな舞台演出をつくっていきます。

まずは、シーンに合わせた照明づくり。時間帯は昼なのか、夕方なのか、夜なのか。さらに、そこが暑いのか寒いのか。それらの状況をわかりやすくするため、各シーンに合わせて、照明をどんな色でどのようにつけるのかを決めていきます。加えて照明は、キャラクターの心情や、状況の変化を表現するのにも使います。こういったさまざまな要素に合わせて、照明をスムーズに切り替えていく工夫も必要になります。

次に、ビジュアル面をより効果的にするため、背景画像に乗せるCGアニメーションなどの制作に移ります。降り出した雪、流れ星、差し込む一筋の光など、CGで動きをつけることで、より印象的なシーンに仕上げていきます。

実際の役者の立ち位置や出はけのタイミングなど、動きの指示もこの段階でつけていきます。朗読劇では役者が座ったまま台本を読んでいくケースもあれば、シーンごとのキャラクターの動きも含め物語の臨場感を高めていく演出もあります。

さらにもうひとつ、「音」の演出も欠かせないものです。物語をより盛り上げるために効果的なBGM、SE等を選定していきます。BGMは基本的に原作に準拠しますが、キャラクターの心情や物語の流れを、より印象的なものにするため、ベタでBGMはつけずに効果的な箇所で挿入したり、SEのみで雰囲気を表現したり、あえてBGMもSEもなしにしたりといった調整をしていきます。SEに関しては、音響効果のスタッフと打ち合わせを重ね、原作で使われていた音源が現存していないものは、そっくりなSEを新たに制作してもらうこともあります。

この間、朗読劇の出演声優以外が担当するキャラクターについては、事前にスタジオでそのセリフを収録していきます。

本読み稽古〜小屋入り、事前仕込み

本番1週間くらい前には出演者に集まってもらい、本読み稽古に入ります。
台本をもとに出演者と打ち合わせをし、読み合わせをし、物語の全容を全員で把握していきます。ここでセリフに合わせて、SEのタイミングや尺なども調整していきます。

その後、本番4日ほど前に小屋入りをし、演出プランに合わせて各シーンの背景、照明などを確認。それらを実際の舞台上で確認し、色味やタイミングなどの細かい部分を本番仕様に近づけてきます。

前日仕込み〜リハーサル〜本番

本番前日に再び小屋入りをし、背景画像と照明の最終調整、BGM、SEも合わせてステージ全体のテクニカルリハーサルを行っていきます。オンラインイベントであれば、この時点で配信映像のカメラ割りやアングルについてもスタッフと調整して、版権元企業様に最終チェックを行ってもらいます。

こうしてすべての準備を終え、当日を迎えることになります。

本番当日。出演声優の皆様に集まってもらい、段取りの説明、確認をしつつ、本番さながらのリハーサルを行っていきます。基本的にこの時点で演出の変更点はないのですが、実際の演技とのバランスで不都合があれば、直前でも修正していきます。午前中からこのリハーサルを通しで行い、全体的に問題がないことを確認して、いよいよ夜にイベント本番を迎えるのです。

最後に

いかがでしたでしょうか?
普通の演劇に比べるとシンプルに見える朗読劇ですが、実はいろいろな準備を3~4ヶ月かけて行い、本番を迎えているのです。みなさんもこれから朗読劇を観劇される際に、このnoteを少し思い出していただけると、また新しい楽しみ方につながるのではないでしょうか。

またIPや作品を朗読劇化してみたい企業様がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。グッズ制作も含めて、ファンのニーズを捉えたご提案をさせていただきます。

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