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IPの活用法。データベース構築で作品監修をシステム化

企業にとってIP(intellectual property=知的財産)は大きな財産。特にエンタメ業界の会社は、ゲームやアニメ、マンガといった作品はもちろん、そこから派生するキャラクターなど、さまざまなIPを所有し、それをIPビジネスとして展開しています。

しかし、最近よく耳にするのがIP管理の大変さです。具体的にどのような問題があるのでしょうか。


IP管理の業務上の課題とは


IPビジネスを展開するには、そのIPが正しく使われているかどうかをチェックする監修業務が必要です。しかし、作品全般にわたって知り尽くし、チェックを入れられる人間はごく限られており、業務が属人化してしまうのが悩みの種だそうです。

こういった問題は作品がシリーズ化され、IP規模が大きくなるほど、歴史が長くなるほど深刻です。実際のところ、多くの企業でごく少数の知見者に頼らざるを得ない現状があるのですが、そういう知見者も会社員である以上、部署異動もあれば退職もありえます。また、外部に依頼している場合であっても同様のケースは起こりますし、スケジュールや金額が折り合わず、続けられなくなる可能性も考慮しなければなりません。

特に大手企業では異動も多く、そのたびに担当者が一から監修作業をしていては、コストがかさむばかりです。仮にアニメやゲームで換算してみるとどうなるでしょう。新たに監修業務を担当したスタッフが、まずは作品すべてに目を通す時間を出してみます。

・20分のアニメを2クール(24話)×3シーズン視聴……24時間
・長編のゲームをクリアまでプレイ……40〜50時間

1日7時間労働だとしても、わずか20分のアニメで3日間、ゲームでは7日間、それだけに業務の時間を奪われてしまいます。しかも、これは「1回観るだけ」あるいは「ひととおりプレイするだけ」の時間です。もし、あるセリフが正しいかどうかを監修する場合には、そのセリフが使われているシーンを思い出して確認をする必要があります。監修のたびに思い出して、探して、照らし合わせるというフローを毎回行っていては、あまりに非効率的ですね。実はこの「思い出す」と「探す」という工程を瞬時に正確に行えることこそが、知見者の最大の強みになります。

また、別の問題として、個々がそれぞれのインプットでラーニングした結果、正解が統一されず監修業務にブレが生じることもあります。たとえばメディアミックス化しているIPでは、原作(小説やコミック)、ゲーム、アニメで同じシーンがあっても、演出やセリフが異なる場合があり、ラーニングに使った媒体によって正解が異なってしまうというリスクが発生します。

データベースで「思い出す」と「探す」の工程を大幅カット


前述のような問題点を解決するひとつの方法がデータベースです。一度構築してしまえば、知識の有無にかかわらず、「キャラクター名」「セリフの一部」「スキル名」などのキーワードで検索することで、誰でも短時間で正解にたどり着けます。「思い出す」と「探す」の手間を極力省き、属人化させないことが最大のメリットです。

では実際にどういったものがあるか、過去に当社が制作したものをベースにご紹介しましょう。

ゲームIPの資料

某ロールプレイングゲームでのデータベース化では、まずクリアまでの手順を網羅したひととおりのプレイ動画に加え、イベントシーンのみを切り出した動画を作成しました。さらに各イベントシーンの内容と登場キャラクターを別データでまとめてあり、キーワードで検索するだけで、シーンの概要がわかり動画もすぐに閲覧できるようになっています。

また、キャラクターが使用するスキルはすべて見やすいアングルで動画に収録し、モーションやエフェクトも確認可能。
主にIPを活かした新規モバイルタイトルの開発や、過去作品・他作品とのコラボイベント開発時の参考資料としてご活用いただいています。

参考:確立したノウハウ。HIKEのゲームプレイ画面撮影サービス

マンガ資料

コミックのセリフをすべてテキストデータ化したものです。コミックのゲーム化の際、メーカーが版元へ提出する前の一次監修用として構築し、口調やセリフ再現のチェックなどに活用されています。ゲームの開発だけでなく、プロモーション素材の監修など、幅広く利用できます。

アニメーション資料

アニメーション作品のなかで、登場キャラクターが必殺技を使ったシーンをまとめ、その音声を抜き出したり、話ごとの敵役の名称とその特徴をまとめた資料です。
過去の登場キャラクターが何年もあとに再登場するケースはよくありますが、そういったときにキャストに当時の感覚を短時間で取り戻していただくための資料です。

スタイルガイド

簡単にいうとIPのルールをまとめた資料で、各種正式名称、使用可能な絵素材、注意事項、禁止事項などが記載されています。協力会社へのルール周知にも活用され、グッズ制作などで監修業務の負担軽減や修正工数の削減を図れます。
近年はキャラクターカラーなどが設定されている作品も多いですが、こちらもカラーコードで記載することで、感覚ではなく数値で正確な色を指定することができます。当社ではスタイルガイドに必要な要素や土台作りからご相談いただけます。

データベース構築時のポイント


データベースの形式にはいろいろありますが、事前によく検討しておくことが肝心です。運用の手間や管理上のリスク、コストなどはもちろん、データベースのボリュームが後々どの程度まで増えるのか、といったことも考えておくことが必要です。

データベース制作の作業内容

まずデータベース制作の大前提ですが、当社でデータベース制作という場合、以下の作業を指しています。

① データベースのシステム構築
② データ入力のための素材の抽出・資料の作成
③ データベースへの入力

作業としては①〜③のすべてでも、もしくは個別でも対応が可能です。普通に考えると①がもっとも高度な部分なので時間もコストもかかりそうですが、単純に時間や手間だけを見ると、実は②や③の負担が大きく、注意が必要です。

運用はオンラインorオフライン?

基本的にはオリジナルのデータベースをサーバー上に構築し、オンラインで運営するのが、もっとも使い勝手はよくなります。データの取り回しや更新作業も楽ですし、大人数が同時に利用することも可能です。ただし、構築コストやサーバーの費用がかかりますから、長期間にわたって活用するような人気シリーズにおすすめでしょう。

一方、ボリュームがそれほどではなく、利用者が少数に限られている場合はアプリケーションを利用し、Excelファイルや動画ファイルといった形で制作することもできます。手軽さと比較的安価でできることがメリットですが、管理がしっかりしていないとデータ受け渡しの際に破損や情報漏洩などのリスクは大きくなりますし、将来的にデータが増大するとトラブルの可能性も出てきます。

最初が肝心、必要項目の選定

データベース構築の際、重要なのが項目の選定です。もちろんあとから追加はできますが、データ入力のための調査が二度手間になるのはコストの大きな無駄。かといって最初から節操なく詰め込んでしまうと、工数は乗算的に膨れ上がります。
用途が具体的に決まっている項目に加えて、使い勝手の側面から必要となる項目(ソートや検索用の項目)を洗い出してから作業を開始しましょう。

見落としがちな更新作業

意外に疎かにしがちなのが更新作業です。既存の作品をデータベース化して、それで完結する場合は、基本的にはあまり更新はありません。しかし、後々さらに詳しい情報を追加したいときや、シリーズ新作やリメイク作品などが出る予定があるのなら、新規情報の追加、既存情報の修正・変更が必要になります。

そういった更新作業のコストを押さえ、誰でも手軽に使えるようにするのなら、初期の設計時に更新専用ページを構築しておく必要があります。その分初期費用はかかりますが、ランニングコストは抑えることができるので、これらも頻度や規模感を考慮して、最初に決めておくべき事項といえるでしょう。
また、PC環境やインターネット環境に変化があった場合、それに合わせてバージョンアップする必要も出てきますので、こちらも頭に入れておきましょう。

最後に

近年は「ファンベース」という考え方が広まりつつあります。これは従来の売上の大半を支えるコアなファンに重きを置くことで、結果的に売上の維持・向上や、新規顧客の獲得につながるという考え方です。

そのなかで、IPの管理方法を改めて見直そうという動きがあり、HIKEにも多数のご相談をいただくようになりました。上記以外にも、長年にわたり蓄積したデータの整理(関連タイトルリスト、関連グッズリストなど)をフォーマット作りからご提案したり、さまざまな情報抽出(キャラの服装の変遷や登場シーンまとめ、敵役リスト、必殺技の使用履歴など)もお任せいただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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