出版業界でよく聞く「アオリ」とは?
今回は出版業界でよく聞く「アオリ」という言葉について説明してみます。
アオリとはいったい何でしょう。出版業界でなくとも、普段、何気なく「あおる」という言葉を使うことは多いかもしれません。何となくわかってはいるけれど、いざ意味を説明するとなると、うまく説明しにくいものがありますね。
アオリの意味
結論からいうと、出版業界における「アオリ」とは、雑誌などの誌面で、読者の興味を惹くためにつける短い文のことです。
キャッチコピーと似てはいますが、キャッチコピーはあくまで商品などの名前を覚えてもらえるよう広告や宣伝のために書かれる文章です。アオリは宣伝のためばかりではなく、使いどころもより広くなります。たとえば漫画のラストに入っている「次号、最終決戦!」なんていうコメントなどもアオリです。
たとえば、下記の画像の中にある「☆圧倒的モテー!」の部分がアオリ。ちなみに、この1コマ漫画は、HIKEの女性向けブランド「TRYSTAR」のメディアミックスコンテンツ「Time [never] comes back!?」(通称ネバカム)から拝借しました。TRYSTARについてはまた別の機会にご紹介します。
話を戻します。ですから、キャッチコピーはアオリの一種と考えてよいのですが、単純に広告業界ではキャッチコピー、出版業界ではアオリという使い分けも決して間違いではありません。また、キャッチコピーも広告にかぎらず、今ではより広い意味に使われることも多くなっています。
「アオリ」とカタカナ表記にしていますが、もともとは「煽る」という言葉が語源です。「火偏(ひへん)」に「扇(おうぎ)」と書くことから想像できるように、「扇であおって火の勢いを強める」ことを意味します。
それが転じて、「何らかの行為によって、相手に刺激や影響を与えること」に用いられるようになりました。
ちなみにgoo辞書を引用してみると、以下のような説明が出てきます。
出版業界のアオリは7に該当することがわかります。ちなみに「アオリ」とカタカナで表記しているのは、業界の慣習として、校正時などにカタカナが用いられることが多いからです。
どう書いたら読む側の感情に働きかけられるか
以上のように、アオリの意味合い自体はシンプルなものです。
しかし、ひと言でアオリと言っても、実際に書くとなると、そう簡単にはいきません。
ここからはアオリやキャッチコピーを制作する際に、ヒントとなりそうなテクニックをいくつか紹介しましょう。
七五調を使ってみる
七五調とは、日本の詩歌などに使われている文章の形式です。五文字・七文字の繰り返しで構成されており、口に出してみるとわかりますが、読みやすく、気持ちよく口ずさめます。
たとえば
「いろはにほへと ちりぬるを」
「兵どもが 夢の跡」
「どんぐりころころ どんぐりこ」……などなど。
このようなリズムは、日本語の潜在的なリズムと合っているため、覚えやすく、頭に残りやすいと言われています。何よりそうした詩歌が千年以上も残り、語り継がれていることがその証しといえるでしょう。先人の知恵はどしどし使っていきたいものです。
対義語を使う
たとえば「小さな巨人」のような言葉がこれに当たります。
この言葉をぱっと見たとき、どんなイメージを持ちましたか? 「巨人なのに小さい……?」などと、ギャップや矛盾感、違和感を持つ方も多いのではないでしょうか。
たくさんのページがある雑誌の中で、人の目を留めるには、いい意味での違和感が必要です。そんな違和感を対義語は作りやすいのです。このような対義語の組み合わせは、いろいろなシチュエーションで作れますので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょう。
具体化する
本のタイトルなどにもよくありますが「5分でわかる!」などというアオリ文句は具体化の一例です(当ブログでもたまに使います)。
「すぐわかる!」と曖昧に表現するより「5分」と具体的な時間を提示することで、読んだ人を受け身な姿勢から「5分ならやってみようかな」などと能動的にさせることができます。要は具体化をすることで、その人にイメージしやすく、より身近に感じてもらうことができるわけです。
漫画などの「100万部突破!」といったアオリも具体化のひとつです。「100万部突破!」は多数派の意見をより好意的にとらえる心理=バンドワゴン効果もミックスされており、ワンパターンにも思えますが、実は今も昔も一定の効果がある鉄板のフレーズということができます。
感情に訴えかける
具体化にしても対義語を使うにしても、結局は、感情に訴えかけることにはなるのですが、ここでいう「感情に訴えかける」は、より相手の感情にダイレクトに伝えるやり方です。
基本的には相手の欲求を満たそうとするか、逆に相手を不安にさせるか、この二つが効果的と言われています。
たとえば「ラスト10ページ、あなたは涙する」などのアオリ文句は、泣いてすっきりしたい人にとっては引きつけられるコピーでしょうし、「この真相は絶対に見抜けない」というコピーがついているミステリー小説であれば、「本当か見てやろう」といった、読者の挑戦心をくすぐることができるかもしれません。
どう書いたら読む側の感情に働きかけられるのか、テクニックはこれだけではありませんので、ぜひご自身でもトライしてみてください。
おしまいに
いかがでしたでしょうか。
アオリやキャッチコピーを書くにも、上記のほかにも実はたくさんのテクニックが駆使されています。
電車内などでも、たまにはスマホから目をあげて、社内広告を見てみるのもおもしろいかもしれません。いろいろなテクニックが確認できるはずです。
HIKEでも書籍やWebなど、さまざまな媒体でアオリやキャッチコピーを書く機会があります。その度に上記のテクニックを駆使するだけでなく、ネタにあわせて頭をひねり、試行錯誤し、最良の形にしてお届けしています。ぜひお気軽に下記までお問い合わせください。
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